ビジネス

2008年10月29日 (水)

マスコラボレーションとオープンイノベーション

前記事の翌週に配信しました。

https://www.ciolinks.jp/journal/detail.php?id=1538

マスコラボレーションとオープンイノベーション

2001年、CEOにA.G.ラフリーが就任した時期、P&Gの売り上げは大きいものの、成長は鈍化していた。マーケットは飽和状態で、これまでP&Gの指示で売り場を提供していた小売店に代わり、大型の小売業が力をつけてきたためにP&G側からの「指図」が効かない状況になりつつあった。
ラフリーはCEOに就任するとすぐにデザインとイノベーションを統括する副社長職を新設してクロウディア・コチャカを抜擢した。コチャカはこれまでは行われていなかったデザイナーと研究開発の担当者が直接仕事を行うコラボレーションを推進した。それは「コネクト+デベロップメント」という構想として実を結んでいる。

その象徴的な製品事例としてスウィッファーが上げられる。P&Gは先のコラボレーションに加え、外部のデザイン・コンサルティング会社のデザイン・コンティニアムと共同で従来のモップにイノベーションを加えた。現場観察を繰り返し、研究開発の担当者と議論をし、従来水で掃除をしていたモップに代わり、水を使わずに静電気で埃をとるモップを市場に出したのだ。現在このモップは75億ドルの売り上げをあげており、最も利益率の高い製品の一つになっている。

そしてラフリーは更に2010年までに全ての新しい製品や技術の50%を社外で生み出すという目標を立てた。その成功例として有名なのがポテトチップに絵を書く技術の開発だ。社内では難航したこのプロジェクトだったが、ウェブを使ってこの課題に対する解決策を世界から募集したところ、イタリアの小さなベイカリーから返答があった。この技術の貢献によって1年もかけずに、低コストでクイズや豆知識を表面に印刷したプリングルズのポテトチップを発売するができたのだ。

P&Gではこの一連の取り組みの結果、研究開発の生産性が60%上がり、イノベーションの成功率が倍となり、一方でコストは低下したと発表されている。ラフリーは「コラボレーションをよくする企業とは、すなわちすばらしいアイディアを生み出し、見つけ、応用することに長けている企業であり、長期にわたって成長を維持できます。」と語っている。

オープンイノベーション
マッキンゼーの調査では、261品目の製品を調査したところ、従来の製品の延長線上で作られた製品は89品目ありながら、それぞれの製品は同カテゴリーにおいて、売り上げに平均1%しか貢献していない。一方で顧客価値を提供できるイノベーティブな製品は3品目しかないにもかかわらず、平均26%の貢献をしている。
市場は低価格なコモディティー商品と、顧客価値を持った高付加価値製品(イノベーティブな製品)に二分されようとしている。どちらが企業収益により大きな影響を与えるかは先の調査結果から自明の理である。
従来の体制、すなわち開発は研究開発部門、市場はマーケティング部門、顧客対応は営業部門、といった枠にとらわれた組織でイノベーションを起こすことにはもはや限界がある。社内外を問わず、コラボレーションをすることによってイノベーションを起こす取り組みが求められており、これを「オープン・イノベーション」と呼ぶ。

ヘンリー・チェスブロウの「オープンビジネスモデル」によると次のような定義がなされている。

1 オープンイノベーションは、社外から社内へ、あるいは社内から社外へと知識を流通させることであり、社内のイノベーションを加速化し、イノベーションの恩恵を外部にももたらして市場を拡大する。

2 オープンイノベーションに取り組むことにより、企業は外部のアイディアや技術を自社の製品やサービスに容易に取り込むことができるようになる。また、社内に眠っているアイディアを他の企業が利用しやすくなる。

3 オープンイノベーションに取り組む前提として、企業は自らのビジネスモデルを変革し、外部のアイディアや技術を取り込みやすいようにする必要がある。一方で、社内の知識を外部においても利用しやすいように体制を整える必要がある。
 
これを実現するためには、先のP&Gの事例でもわかるように2つの取り組み、あるいはその両方が必要となってくる。マスコラボレーションと社内コラボレーションだ。

マスコラボレーション
一口にマスコラボレーションと言ってもいくつかのカテゴリーがある。ここではドン・タプスコットの定義(著書ウィキノミクス)から2つを紹介したい。

① アイディアゴラ(アイディアの広場)
インターネットを活用して、世界中の知恵を活用する「課題」と「アイディア」のマッチングを行う市場のようなものと理解していただきたい。

アメリカの大手医療品会社のイーライリリー社は2001年に「イノセンティブ」を立ち上げた。これは企業側が「シーカー(seeker)」として解決したい課題を提示すると「ソルバー(Solver)」つまりネットに参加している科学者や研究者が応募出来る仕組みだ。その懸賞金は5000ドルから100万ドルまで、案件によって与えられる。現在ではボーイング、ダウケミカル、デュポン、P&GそしてSAPなど幅広い業種の企業が活用をしている。こういった取り組みはイノセンティブだけでなく、多くの市場提供者が生まれている。たとえば退職者のみを対象とした「ユアアンコール」などユニークなものもある。アイディアゴラとはアテネ時代の「アゴラ」(活動の拠点であった広場)を使った造語だ。市場に場を提供し、様々な課題を解決して、より早く効率的に市場に商品を提供できる可能性がある。

② プロシューマー
アルビン・トフラーが著書「第三の波」で使ったConsumer(消費者)とProducer(生産者)を組み合わせた造語。最近ではエリック・フォン・ヒッペルが著書「民主化するイノベーションの時代」で、リードユーザーがイノベーションを起こしている事例をたくさん紹介している。リードユーザーとは、ユーザー自身が自分のニーズを満たすために商品を改良する人たちである。ヒッペルは、リードユーザーが改良したもの(つまりユーザーによるイノベーション)はより市場で受け入れられる、としている。

日本での事例を紹介したい。

エースコックではMixi(日本最大のSNS)の公認コミュニティーとして「カップめん開発オーディション」を立ち上げた。現在ではこのコミュニティーに4228名(10月24日現在)の参加がある。このコミュニティーではカップめんとカップはるさめ部門で様々なアイディアを募集し、数百におよびアイディアが提案された。そして「黒石名物・つゆ焼そば」と「カレーラクサ春雨」が商品化された。ここでは商品の中身のみならず、パッケージやキャッチコピーに至るまで消費者の意見を中心に商品化に活かされた。現在では更に4つの商品が同様の方法で企画されている。

社内コラボレーション
GEのCEOジェフ・イメルトは、もはやシックス・シグマだけでは21世紀にGEが生き延びていくには不十分と考えていた。シックス・シグマは生産性と効率性の向上では多大な貢献をしたが、「顧客の視点でものを考える」には新たな方法が必要であると模索して、社内の研究部門と市場のニーズを結びつけるために50億ドルの予算で80のプロジェクトを立ち上げた。
これまでGEは環境汚染を犯している側の企業であったが、イメルトはエネルギー会社や重化学工業会社のトップ達が環境に配慮した技術を求めている事を知った。これまでは高価なガスタービンを回す発電設備をGE側の思いで作って売っていたのだが、現在では風力発電や太陽熱発電と領域を広げて売り上げを大きく伸ばしている。

社内ではイノベーションを推し進めるための専門の役員を採用してCENCOR(Calibrate, Explore, Create, Organize and Realize)という活動として取り組んでいる。CENCORでは①市場観察、②仮説構築、③デザイン、④市場での検証、というステップで商品を開発する。そのためには組織の壁を低くして、創造的な組織を構築してマネジメントを行っている。

まとめ
市場で新たなイノベーションを起こすためにオープンなコラボレーションが大変有効な手段であることを述べてきた。そのためには企業の持つ課題のみならず知的財産の扱いを思い切ってオープンにすることが出来るかどうか、が成功の秘訣だ。また社内にある様々なアイディアや経験をひとつにとりまとめてコラボレーションを行うような環境作り。そのための組織のあり方やコミュニケーションの取り方に革新が必要になってくる。
そして忘れてならないのが「顧客視点」に基づいた商品開発である。
テクノロジーを活用したオープンイノベーションの取り組みはもうすでに市場では成功をおさめ始めている。

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トランザクションからコラボレーションへ

CIOマガジンのWEBでCIO Linksというのがありますが、そこに投稿した記事を転載します。

本編はここにあります。

https://www.ciolinks.jp/journal/detail.php?id=1507

トランザクションからコラボレーションへ

水平統合と垂直統合
90年代に入り、製造業の中には製造業でありながら工場設備を持たない、いわゆる「ファブレス」カンパニーが成功を収めるようになってきた。最近ではアップル社がiPodの製造工程の多くを外部委託していることがよく知られている。
弊社シスコシステムズも製造業務の90%ほどを外部委託しており、社内に生産ラインはほとんどなくなっている。製造そのものをコアとするEMS(受託生産)が、グローバルにビジネスを展開しており、品質、納期、コストを勘案してフレキシブルに製造委託が可能になっている。
一方で日本の製造業が得意とする垂直統合型モデル。製品の細かい仕様をカスタマイズして自社生産するため、市場ニーズに対応した製品を素早く投入して成功を収めている。
優劣はともかくとして、いずれにしても水平統合の流れは止めることは出来ず、グローバルの潮流になりつつある。

水平統合のモデル自体はさして新しい概念ではないが、ここに来てその流れが確固たる位置を確立した理由は大きく2つあると思われる。

1 コアにフォーカスする経営スタイル
経営の安定、市場の多様化への対応など、この10年間の間コアを見極め、これにフォーカスすることにより業績の向上を果たしてきた企業が多い。製造技術をコア、としている企業が多い反面、コアは製品企画・開発とマーケティングとする企業も多くなった。
アップルは斬新なデザインとネットワークと連携したサービスによりiPodを大ヒット商品に仕上げた。コアはあくまでもデザインとサービスとし、そのデザイン仕様を満足させる企業に製造委託をしているわけだ。

企業のコアとはどのように見極めれば良いのであろうか。よく言われる笑い話だが、企業のトップが経営会議で「我が社のコアはどこにあるのか意見をもらいたい」と各事業を統括している幹部達に問うたところ、すべての幹部が「私の事業はコアです」と答えた、という。社員はもちろん自分の仕事に誇りをもっている。それを尊重してしまうとすべてがコアになるわけだ。

米国コンサルタントのジェフリー・ムーアはその著書「ライフサイクル・イノベーション」でコアとコンテキスト、そしてミッションクリティカル、ノン・ミッションクリティカルの2次元で分類をし、その企業が内製すべきビジネスと外部委託可能、あるいは外部委託すべきビジネスの分析手法を提案している。
シスコではこの手法を活用し、経営者自らが分析をした結果、「テクノロジー」「顧客サービス」「セールス&マーケティング」などがコアであることを認識した。それ以外の機能はアウトソース(すべて外部委託)、もしくはアウトタスク(管理は自社)する方向で検討を行い順次実施をした。(なお製造部門でも個別に分析を行いラインは外部化したが、製造技術、調達、サプライチェーン、品質検査などコアとして内部化している機能も多い。)

2 ネットワーク技術の革新
多くの企業が外部委託に踏み切れない理由の一つとしてトランザクションコストが上げられる。外部委託するにも、契約、設計、受発注、生産管理、品質管理など様々な部分でのトランザクションやコラボレーションが必要とされる。そこにかかるコストや時間を勘案すると、外部委託に魅力を感じるものの、なかなか判断がつきにくい。
しかしこの10年間におけるIT、ネットワークの技術/サービス革新がこれを可能とした。
多くの企業はERPにより業務が標準化されITによる集中管理が可能となった。そこにXMLなどのIT間ビジネス・プロトコルが策定され、インターネットを介しての企業取引が容易になった。ネットワークコストの低下やインフラ整備により容易に企業間通信が可能になったのだ。

さらに需要予測ソリューションの精度が上がり、シスコでは個々の営業担当者の持つ「フォーキャスト」がITにより集められ、処理され、需要予測データーとして、ネットを通して製造委託企業や部品サプライヤーに(条件付きながら)開示するに至っている。
これらの試みにより、受発注を含めたトランザクションコストは大幅に削減され、また高い精度で生産計画を立てることが可能となり、結果的に取引企業とWin-Winな関係、つまりお互いの在庫圧縮といったコスト削減にも寄与することが可能となってきた。

トランザクションからコラボレーションへ
世界はネットによりフラット化し、至る所に優れた能力や技術力が存在していることが分かった。先の2つの点から、企業間のつながりも密になり、場所を選ばない企業間連携が可能となっている。
ドン・タポスコットは著書「ウィキイノミックス」で世界工場、という概念を提案している。「いま、勝ち組になる企業は、外壁がオープンで風通しが良く、社外の知識や資源、能力を使いこなすという強みを持つところだ。(中略)むしろ製造業こそ、企業という壁のオープン化、希薄化が最も大きな変革を引き起こす分野である。(中略)製品のアイディアを作るところから、納品にいたるまで、すべてを、ゆるやかな協調で動くシームレスなグローバルコラボレーションによって行うのだ。」と記述している。
そして「サプライチーェン」は古い言葉であるとして、「価値のネットワーク(Value Network)」へと変遷すると見ている。
これは何を意味するのだろうか。もはや企業間取引(B2B)のネット化はトレンドを通り越して、当たり前となっている。そして次にやってくるのが協調である。すなわち商品やサービスのデザインといった上流のプロセスをもパートナーと協調してイノベーションを起こす、という流れだ。実際にボーイング社やBMW社は世界中のサプライヤー企業と情報を共有し、製品の開発・製造にイノベーションを起こし、効率化もなされている。

企業間の協調を促すためにネットを活用したコラボレーションツールが準備され、パートナー企業をシームレスにまとめ上げるのである。繰り返すがもはやトランザクションのネット化は当たり前、むしろ競争力を増すためには企業間のコラボレーションが重要な鍵となってきたのである。

技術的には手軽なWEB会議や高品質なテレプレゼンスなど、お互いに時間と手間をかけずにコラボレーションする環境が整ってきた。必要時にすぐに会議を実施し、また共同作業を可能とするネットワーク。これにより市場へのリードタイムの短縮をもたらし、さらに出張費の削減という副次効果もある。

さらに一歩進んだ取り組みを紹介しておきたい。
それは「知識デザイン企業」への変革である。詳細は次のマスコラボレーションのテーマに譲るが、「技術から製品を作る時代」から「デザインを中心に作る時代」に変革をしていく。これまでコアと考えられ内製化してきた製品やサービスのデザインそのものまでを外部化することによる成功例が数多く出てきている。有名なケースはIDEO社だ。デザインをコアとする企業「IDEO」社がクライアント企業の商品の企画段階から深く関与している。またフェラーリのデザインで有名なイタリアのデザイン工房(カロッツェリアという)のピニンファリーナは車のデザインのみならず、一部の車の製造まで委託されている。商品企画から関与するために発生する企業間コラボレーションが、いかに重要かは察していただけると思う。

まとめと今後の発展
よりオープンにイノベーションを起こす、という企業同士の取り組みが成功の要因になっている。そのためにIT活用によるコラボレーションは加速化し、重要度はより高くなるだろう。更にITのみならず、よりオープンな企業文化への変革も求められるようになってくる。
ここまでのまとめになるが、企業間コラボレーションを活用して、より高い生産性やイノベーションを実現するにはどのような手を打てばよいだろうか。 

  1. 現在取引のネット化
  2. 企業のコアと外部化可能性の再検討
  3. 企業間協調関係の推進(ビジネスのオープン化)
  4. 企業間コラボレーションのIT化、ネット化

これらの取り組みにより、厳しい経営環境のなか、プロセスは効率化しつつ顧客を惹きつける商品やサービスの市場展開を期待したい。

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2008年3月 3日 (月)

香港空港でのRFID

香港空港では意欲的にRFIDを活用した取り組みがなされています。今回同行の方に航空会社の方もおられ、GS1との会議でも積極的な意見交換を行いました。
香港空港では手荷物すべてにRFID付きのバゲージ・タグを付けています。3(?)年前から取り組んでいるようで、これまではRFIDのシールを荷物に貼っていたようですが、3週間前から通常のバゲージ・タグにRFIDを付けています。

これまで手荷物はバーコードで読み取りをして、適切な機材に自動的に配送していましたが、これにより人手と手間が大幅に効率化され、更に配送ミスが減ったようです。またバーコードでは読み取りのために9カ所の方向からリーダーを当てていました。それでも認識率は80%。しかしRFIDにより1カ所で確実に読めるようになり、設備投資も減ったそうです。
これにより1日約8万の手荷物を捌くために、このシステムの導入は空港としては念願のものであったのでしょう。

航空会社の方によると「今のところエアラインにタグの請求はなく、1年間はこのまま」らしいのですが、1タグあたり20セント(アメリカドル)ほどかかっているらしく、もし将来エアラインに負担を求められると年間の費用が膨大になり、負担が心配になります。
これだけなら空港の効率化は出来ても、航空会社にはなんのメリットもない、と言っても過言ではなく、なんらかの工夫が必要となります。

一番わかりやすいのが機材に載せてから、再度荷物を取り出す際の効率化だそうです。定時になっても現れないお客様がいらっしゃった場合には、ある程度の判断でそのお客様を乗せずに飛ばすことになります。
しかしその際にも積んだ荷物は確実に下ろす必要があるのです。

理由はお客様と一緒に運ぶことがありますが、それよりもセキュリティー・安全面が大きいとのこと。つまり悪意のある、顧客を装ったテロリストが荷物に何かを紛れ込ませ、自分は搭乗しない、という可能性もあるわけです。
さて、その荷物を探し出して機材から下ろすのは大変な苦労だそうです。人手をかけてタグを一つひとつ読んで、たくさんあるコンテナからひとつだけを探し出す。一番奥のコンテナだったらもう大変な時間がかかるわけです。

その間、乗客には迷惑がかかるし、当然ながら空港使用料はチャージされる。航空会社にしてみるとたまったもんじゃないですね。
もしこれが「荷物がどのコンテナにあるか」把握でき、かつRFIDリーダーでかざすだけで見つけることが出来たら相当なROIを見込めるのです。

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2008年2月28日 (木)

SCIC続き

SCICが目指しているのは、まずは中国からの輸出プロセスをRFIDにより世界標準に押し上げること。それにより競争力を高めるのです。そのためWal-MatやドイツのMetroといった巨大小売業からの支援も取り、効率的に物流を行う仕組みが実現しつつあります。

特に力を入れ始めたのは佛山市。この地域にはたくさんの製造業が進出をして工場が作られています。日本からの誘致も積極的で市、国を挙げて海外輸出に取り組んでいます。

SCICでは佛山市と協力をして、より多くの製造業がこの仕組みに載ってくるように力を入れています。システムの本格稼働は今年の4月。このプロセスに則れば、米国やヨーロッパの大手小売業に製品を提供することが比較的容易になるでしょう。

次に狙っているのは海外のネットワークとの提携です。今回も日本のお客様に積極的にプロモーションをしていました。ネットワークベースのシステムで、形態としてはASPモデルとなりますので、ネットさえつながれば世界中のどこの国でも使えるわけです。2週間前には日本の経済産業省を訪問して、この仕組みについて説明をしてきた、との話でした。

詳しいことがお知りになりたい方はGS1のHPまでどうぞ。

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香港:Supply Chain Innovation Centre(SCIC)

Hk011

香港のサイエンスパークの一角にこのセンターはあります。私は数社のお客様をお連れして、ここで終日RFIDを使った改革について議論をする予定で訪れました。まずこのセンターですが、GS1香港が中心となり、各企業や団体からの支援で運営されています。http://www.gs1hk.org/en/hkana/gs1/home.html

Hk012

ロゴが出ているのはその協賛企業と団体です。ここではRFIDを使った様々なデモや実験が行われています。一連のサプライチェーンで言うと、出荷する商品にタグを付ける場面、それをシッピングする場面。この時点で倉庫側に出荷情報が流れ、倉庫側での自動検品がなされます。

倉庫ではRFIDリーダーを積んだフォークリフト(実際は小さく模してある)で商品を倉庫のあるべき場所に誘導するモデル。これは日本のある物流企業が実際に行っていますが、床にRFIDが仕掛けてあり、その上をリーダー付きのフォークリフトが動くと、逐次位置情報が出る仕組みで、間違った方向に進むとアラームが出ます。

そして出荷された商品が売り場に並び、売り場での欠品管理のデモ。

Hk013

これらの一連の流れでツアーが出来る仕掛けになっています。更に様々なRFIDが展示されていて、用途別に整理されています。

とても残念ですが、このセンターはプレゼンテーションルーム以外は撮影禁止になっています。そのため個々に載せることが出来ません....

この日は朝の9時から夕方の5時までびっしりとツアーを含めた会議を行いました。

ご存じかもしれませんが、中国政府と香港は投資をしてGS1香港が物流ネットワーク「ePC Network」を運営しています。これをPPRD (Pan-Pearl River Delta)プロジェクトと呼び、汎珠江デルタすなわち香港、マカオの2特別行政区に広東、福建、海南などの9省を合わせた地区での大きな改革を行っています。

背景にあるのはアメリカWal-Martが入荷の際に義務づけたRFIDの貼り付けです。今や中国製品はWal-Martの商品のかなりのシェアを持っています。ところが中国のたとえば四川省にはこれを実現するテクノロジーがありません。もしRFIDを付けないとビジネスが出来なくなる。このPPRDには13万社の製造業があり、今や世界の工場となった地域。ビジネスが出来ないと大変です。そこで官が投資をして、少ない元手でシステムの提供をしようと出来上がったネットワークです。

最初のパイロットではVTech社、Wal-Martでのシェアが大きい家庭用電話機器の会社が対象で運用を行い、見事成功をしました。すべてePC Global標準で構成されており、インテルとシスコシステムズが協力をしてこのシステムを構築しました。

Hk014

GS1はこのパイロットをePOD (Electronic Proof of Delivery )としてシステム化し、本格運用を4月に目指して展開をしています。

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2008年1月27日 (日)

5番街のCoachのIT改革

ITには堅いコーチが店舗でITを活用していたのでびっくりしました。2年前のNRFでコーチのITディレクターの方と話をする機会があったのです。彼らはITによる革新には消極的でした。
特に店舗においては、です。接客そこが基本、ITを使うなら接客に時間を使うのが我々のやり方、と説明されました。同行した日本の小売りのお客さんからは「コーチからは学ぶことがなかったなぁ」という声が聞かれました。

しかし改革は行われていたのでした。お客として行ったのであまり詳細に調べることは出来ませんでしたが。

Ny181

写真は携帯端末です。無線LANでつながっています。在庫確認が簡単にできます。お店の方に少し質問をしたわけです。
バッグの種類も色も豊富なので在庫切れはよくあるらしいのです。倉庫に行って調べて在庫切れ、となるとお客さんはがっかりです。そこで携帯端末ですぐに在庫確認をします。
別に真新しくないですか?

でも次のアクションはどうでしょうか。商品は現品で渡すわけではありません。倉庫から接客の担当者が持ってきて、それを店頭で包装して渡していました。が、この携帯端末に入力すると倉庫の担当者が包装までして持ってきてくれます。
店頭の担当者はお客さんをお待たせしている時間帯に会計を済ませてしまいます。ついでに「このアクセサリーを着けるとおしゃれに見えますよ」とクロスセルに努めます。売り上げや接客時間の短縮についてはわかりませんが、これも顧客体験。

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2008年1月26日 (土)

NRF:セッション Daniel Pink

IBM主催のセッションでの講演。Daniel Pinkは「A Whole New Mind」の著者です。

最初に左脳より右脳が今後の商品開発には貢献する、という話がありました。たとえばトレイブラシ。どこの家庭にもあり市場は飽和しています。理系の出身者のほとんどは左脳で考える習慣があるので、いかに機能的であるか、について時間をかけて商品化するけれどこの市場ではもう無理、ということになります。しかし、右脳で考えると斬新なデザイン。機能は何ら変わらないけど売れています。(写真を撮り忘れました)
単にクールなデザインにしただけ(といってもかなり大変だったでしょうけど)。これを「ドラマチックな飛躍」と表現していました。

同じことは写真の消火器でも言えることです。

Ny179

彼は簡単には自動化できない6つのポイントがあると説明しました。
① デザイン
② ストーリー
③ シンフォニー
④ エンパシー(共感)
⑤ プレイ(Play)
⑥ ミーニング(意味)

です。時間の関係で全ての説明をしたわけではありませんが、デザインは先の例ですね。

ストーリーはワインにたとえていました。自分はだいたい10ドルのワインを飲んでいる。あるスーパーでワインを買おうとしたら3つのワインを勧められた。
1つめはワインの産地や歴史が詳細に書かれてあった、2つめは葡萄の種類や作られたプロセスが示されていた、そして3つめは....。こんな事がかいてあった「兄弟二人で始めたワイナリーだが、もうなくなった親があるタトゥー(入れ墨)が好きだった。それをラベルにしたのは自分たちの親を愛していたから。自分たちはこのワインの売り上げの何%かをチャリティーに寄附することにしている。」英語を完全に理解した訳ではないので間違いがあるかもしれませんが、おおよそそんな内容でした。

Ny180
あなたならどれを買います?自分はこの話を読んで迷うことなく3つめにしてしたし、その後このワインばかりを飲んでいる。消費者はストーリーに心動かされる。

ちなみにワインはヴァージニア州の「Big Tatoo」ワイナリーでした。後ほどHPで読んだところによると、2000年にお母さんをガンでなくした。お母さんはこのワインラベルの「タトゥー」が大好きだった。よって1本あたりの売り上げの50セントをヴァージニア州のとある病院やガンセンター、ホスピスに寄附をすることにした、ということです。今度アメリカで見つけたら購入してみます。

http://www.bigtattoored.com/

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2008年1月25日 (金)

NRF:セッション P&G

同じシスコもセッションでP&GのMarshall Haine氏が講演。この方のタイトルはすごい。「Global Operations-Retail Innovation」 グローバル・イノベーションの責任者です。イノベーションという部署を作るP&Gの凄さ。

          Ny177
・ P&Gは120カ国で280のブランドを出しているが、その源をたどるとたった11のアイディアから出発している。
・ R&Dにかなりの投資をしているがたった半分しか成功しない。(え?半分も成功してるんだ、と思った人が大半でしょうね。)
・ イノベーションをプロセス化してしまう(驚き!)
・ 会社の上層部がハッパをかけてもイノベーションは出ない
・ マルチファンクションチームを立ち上げてWEB2.0技術を使って共同開発
・ 他地域のアイディアを応用することを推奨
・ 50%のイノベーションがP&Gの外部から出ている
・ イノベーションの計測は2点あり、それは消費者が「選んだ」時点と「使った」時点

食器洗い機専用の潜在で「DAWN」という息の長い商品があります。通常こういう商品は(日本ならなおさら)新しいブランドに取って代わられるものですが、この商品は違う。
商品自体の成分なども変わっているのかもしれませんが、テレビコマーシャルでイノベーションを実現して、いまだにトップシェアなのです。

Ny178
見たことがあると思いますがオイルまみれになった鳥をP&GのDAWNで洗浄して自然に帰す。いかにこの洗剤は自然に優しいかを完璧に、しかも短時間でアピールすることが出来ました。

プレゼンが終わってからほんの少しだけ話をすることが出来ました。日本には東京と神戸にイノベーションセンターがあるとのことです。来日した折には話を聞かせてくれるとのこと、楽しみです。

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2008年1月24日 (木)

NRF:セッション Don Tapscott

ウィキノミクス(Wikinomics)の著者のDon Tapscottがシスコ主催のスーパーセッションで講演をしました。約40分でしたが示唆にとみ興味深いものでした。すべてを紹介するのは難しいのですがポイントだけ。

・ WEBはどんどん拡張しておりアメリカ人の82%がMy Spaceに登録をしている
・ WEB2.0はもはやPCとインターネットから脱皮してデバイスレベルにまで拡張している
・ 人々の一人一人がネットを介してコラボレーションをすることにより全く新しいプロセスが生み出されている

Ny175

仕事の仕方で言うと、これまでの階層である「上司と部下」といった関係が崩壊しつつある。上司は経験豊富でいろんな事を知っているからこそ上司であるが、ネット世代の若者はオールド世代の人よりもより早く情報を仕入れ、ネットによってコラボレーションをすることにより、より幅広い視点で仕事をこなせるようになってくる。
一人一人が「プロフェッショナル」となり、上司が指導をするモデルから「Peer」という表現で表される関係に移行してゆくだろう。Peerとはつまり「対等」ということです。
「ITを使いこなせないが俺は経験豊富だ」とそれだけで威張っている方は、気がついたら置いてきぼりになるかもしれませんよ。これを「リーダーシップの危機」と言っていました。

かと言って人間は失敗して学ぶ動物ですから、たとえば営業職のようにネットがすごく使えるからといってすぐに一流になるとは限らない業種があるこも事実です。

ある鉱山開発の会社が自分の会社のノウハウではもう金鉱を見つける限界に来てしまった。そこで50万ドルの懸賞をつけて世界中に公募をしたところ、いくつかの応募があった。この投資は結局100億ドルの利益につながった。

P&Gでは赤ワインのシミを消す薬品をネットで公募した。台北にいるすでに引退をした研究者が応募をし商品化することが出来た。

(以上は著書に詳しいです)

Ny176

企業が長年築きあげてきたモデルはやがて大きなパラダイムシフトを起こすであろう。たった数年前にネットをつかった企業連携を議論していたのに、これから起こるパラダイムシフトは「マス・コラボレーション」である。
世の中の誰もが何かを起こすチャンスを持っており、企業にしてみれば潜在的に世界のどこかしらに課題を解決する誰かがいる可能性が高い。ネットを活用したマスコラボレーションに取り組まないと先進企業に遅れを取りますヨ。

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2008年1月23日 (水)

NRF:これぞ顧客体験!

これもX08での展示です。机そのものがディスプレイになっています。

Ny170
カードゲームでもやっているように見えますか?このデモはバーの注文です。様々なカクテルやデザートが映っています。顧客と反対側に相対して説明をしています。すべて指でディスプレイを操作します。

この場合、映っている様々な商品をタッチするとその詳細な説明がポップアップしてズームされますし、商品群を指で左右になぞると商品リストが回転してグルグルと別な商品がディスプレイします。

             Ny171

たとえばワインを注文します。グラスにRFIDが仕込んであり、そもグラスをテーブルに載せるとグラスの底にカード様のメニューが出てきます。指で触るとポップアップします。
たとえばワインの産地や特徴の説明が出ます。更にタッチするとグーグルマップの様な航空写真出てきます。そのワインの畑が表示されています。この地図自体をタッチして指を動かすと地図がスクロールします。

Ny172

もう少し想像を働かせると、ワイナリーのオーナが出てきて、ワイン作りの特徴やご挨拶、などを画像で表示するとおもしろい。他のカードとタッチするとこのワインに合うおつまみの説明が出ます。そうするとクロスセルにつながりますね。

Ny173

これはスノーボードのオーダーメードのデモ。スノボの外観が出てきます。その上に表のデザインの選択肢がたくさん現れます。指で選んで印刷したい場所に動かします。
色も選べますし、更に両手の指で引っ張るとデザインの拡大縮小が出来ます。スノボを指で回すと反転して裏側のデザインも可能。

最後は携帯電話でのデモ。RFID、たとえばフェリカのついた携帯電話。お店でこの上に置くとこの電話の特徴や値段が表示されます。複数の電話を置くと比較表が現れます。その表示は残せるので、いろいろおいて考えることが出来ます。

Ny174

デモでは携帯の呼び出し音をそこで購入していました。いくつかのクールな呼び出し音があり、携帯を置いて呼び出し音を選ぶとその場で音楽がインストールされます。
さらに携帯のアドレス帳から自分の友人のリストと顔写真までがこのディスプレイに表示されました。その友人毎に呼び出し音のリストから指で引っ張ってきてドラッグ(?)すると個別の呼び出し音が設定できます。

文字で説明するのは本当に難しいのですが、「おぉ!」という感動を伴うソリューションです。参考出品なので日本で見ることが出来ないでしょうね。残念。
これぞ顧客体験です。英語では「Customer Experience」と言っており、いかにこれを高めるか、というのが議論されています。

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