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2008年10月29日 (水)

トランザクションからコラボレーションへ

CIOマガジンのWEBでCIO Linksというのがありますが、そこに投稿した記事を転載します。

本編はここにあります。

https://www.ciolinks.jp/journal/detail.php?id=1507

トランザクションからコラボレーションへ

水平統合と垂直統合
90年代に入り、製造業の中には製造業でありながら工場設備を持たない、いわゆる「ファブレス」カンパニーが成功を収めるようになってきた。最近ではアップル社がiPodの製造工程の多くを外部委託していることがよく知られている。
弊社シスコシステムズも製造業務の90%ほどを外部委託しており、社内に生産ラインはほとんどなくなっている。製造そのものをコアとするEMS(受託生産)が、グローバルにビジネスを展開しており、品質、納期、コストを勘案してフレキシブルに製造委託が可能になっている。
一方で日本の製造業が得意とする垂直統合型モデル。製品の細かい仕様をカスタマイズして自社生産するため、市場ニーズに対応した製品を素早く投入して成功を収めている。
優劣はともかくとして、いずれにしても水平統合の流れは止めることは出来ず、グローバルの潮流になりつつある。

水平統合のモデル自体はさして新しい概念ではないが、ここに来てその流れが確固たる位置を確立した理由は大きく2つあると思われる。

1 コアにフォーカスする経営スタイル
経営の安定、市場の多様化への対応など、この10年間の間コアを見極め、これにフォーカスすることにより業績の向上を果たしてきた企業が多い。製造技術をコア、としている企業が多い反面、コアは製品企画・開発とマーケティングとする企業も多くなった。
アップルは斬新なデザインとネットワークと連携したサービスによりiPodを大ヒット商品に仕上げた。コアはあくまでもデザインとサービスとし、そのデザイン仕様を満足させる企業に製造委託をしているわけだ。

企業のコアとはどのように見極めれば良いのであろうか。よく言われる笑い話だが、企業のトップが経営会議で「我が社のコアはどこにあるのか意見をもらいたい」と各事業を統括している幹部達に問うたところ、すべての幹部が「私の事業はコアです」と答えた、という。社員はもちろん自分の仕事に誇りをもっている。それを尊重してしまうとすべてがコアになるわけだ。

米国コンサルタントのジェフリー・ムーアはその著書「ライフサイクル・イノベーション」でコアとコンテキスト、そしてミッションクリティカル、ノン・ミッションクリティカルの2次元で分類をし、その企業が内製すべきビジネスと外部委託可能、あるいは外部委託すべきビジネスの分析手法を提案している。
シスコではこの手法を活用し、経営者自らが分析をした結果、「テクノロジー」「顧客サービス」「セールス&マーケティング」などがコアであることを認識した。それ以外の機能はアウトソース(すべて外部委託)、もしくはアウトタスク(管理は自社)する方向で検討を行い順次実施をした。(なお製造部門でも個別に分析を行いラインは外部化したが、製造技術、調達、サプライチェーン、品質検査などコアとして内部化している機能も多い。)

2 ネットワーク技術の革新
多くの企業が外部委託に踏み切れない理由の一つとしてトランザクションコストが上げられる。外部委託するにも、契約、設計、受発注、生産管理、品質管理など様々な部分でのトランザクションやコラボレーションが必要とされる。そこにかかるコストや時間を勘案すると、外部委託に魅力を感じるものの、なかなか判断がつきにくい。
しかしこの10年間におけるIT、ネットワークの技術/サービス革新がこれを可能とした。
多くの企業はERPにより業務が標準化されITによる集中管理が可能となった。そこにXMLなどのIT間ビジネス・プロトコルが策定され、インターネットを介しての企業取引が容易になった。ネットワークコストの低下やインフラ整備により容易に企業間通信が可能になったのだ。

さらに需要予測ソリューションの精度が上がり、シスコでは個々の営業担当者の持つ「フォーキャスト」がITにより集められ、処理され、需要予測データーとして、ネットを通して製造委託企業や部品サプライヤーに(条件付きながら)開示するに至っている。
これらの試みにより、受発注を含めたトランザクションコストは大幅に削減され、また高い精度で生産計画を立てることが可能となり、結果的に取引企業とWin-Winな関係、つまりお互いの在庫圧縮といったコスト削減にも寄与することが可能となってきた。

トランザクションからコラボレーションへ
世界はネットによりフラット化し、至る所に優れた能力や技術力が存在していることが分かった。先の2つの点から、企業間のつながりも密になり、場所を選ばない企業間連携が可能となっている。
ドン・タポスコットは著書「ウィキイノミックス」で世界工場、という概念を提案している。「いま、勝ち組になる企業は、外壁がオープンで風通しが良く、社外の知識や資源、能力を使いこなすという強みを持つところだ。(中略)むしろ製造業こそ、企業という壁のオープン化、希薄化が最も大きな変革を引き起こす分野である。(中略)製品のアイディアを作るところから、納品にいたるまで、すべてを、ゆるやかな協調で動くシームレスなグローバルコラボレーションによって行うのだ。」と記述している。
そして「サプライチーェン」は古い言葉であるとして、「価値のネットワーク(Value Network)」へと変遷すると見ている。
これは何を意味するのだろうか。もはや企業間取引(B2B)のネット化はトレンドを通り越して、当たり前となっている。そして次にやってくるのが協調である。すなわち商品やサービスのデザインといった上流のプロセスをもパートナーと協調してイノベーションを起こす、という流れだ。実際にボーイング社やBMW社は世界中のサプライヤー企業と情報を共有し、製品の開発・製造にイノベーションを起こし、効率化もなされている。

企業間の協調を促すためにネットを活用したコラボレーションツールが準備され、パートナー企業をシームレスにまとめ上げるのである。繰り返すがもはやトランザクションのネット化は当たり前、むしろ競争力を増すためには企業間のコラボレーションが重要な鍵となってきたのである。

技術的には手軽なWEB会議や高品質なテレプレゼンスなど、お互いに時間と手間をかけずにコラボレーションする環境が整ってきた。必要時にすぐに会議を実施し、また共同作業を可能とするネットワーク。これにより市場へのリードタイムの短縮をもたらし、さらに出張費の削減という副次効果もある。

さらに一歩進んだ取り組みを紹介しておきたい。
それは「知識デザイン企業」への変革である。詳細は次のマスコラボレーションのテーマに譲るが、「技術から製品を作る時代」から「デザインを中心に作る時代」に変革をしていく。これまでコアと考えられ内製化してきた製品やサービスのデザインそのものまでを外部化することによる成功例が数多く出てきている。有名なケースはIDEO社だ。デザインをコアとする企業「IDEO」社がクライアント企業の商品の企画段階から深く関与している。またフェラーリのデザインで有名なイタリアのデザイン工房(カロッツェリアという)のピニンファリーナは車のデザインのみならず、一部の車の製造まで委託されている。商品企画から関与するために発生する企業間コラボレーションが、いかに重要かは察していただけると思う。

まとめと今後の発展
よりオープンにイノベーションを起こす、という企業同士の取り組みが成功の要因になっている。そのためにIT活用によるコラボレーションは加速化し、重要度はより高くなるだろう。更にITのみならず、よりオープンな企業文化への変革も求められるようになってくる。
ここまでのまとめになるが、企業間コラボレーションを活用して、より高い生産性やイノベーションを実現するにはどのような手を打てばよいだろうか。 

  1. 現在取引のネット化
  2. 企業のコアと外部化可能性の再検討
  3. 企業間協調関係の推進(ビジネスのオープン化)
  4. 企業間コラボレーションのIT化、ネット化

これらの取り組みにより、厳しい経営環境のなか、プロセスは効率化しつつ顧客を惹きつける商品やサービスの市場展開を期待したい。

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