« 父親とゴルフでベストスコア | トップページ | 死ぬまでに飲みたい30本のシャンパン »

2008年10月16日 (木)

フェラーリと鉄瓶

Book034

奥山清行 著

ご存じの方もいらっしゃると思うが、フェラーリやポルシェをデザインした奥山氏は現在は日本でデザイナーとして活躍をしていらっしゃる。

本書は奥山氏の経歴と経験を元にストーリーが流れており、特にイタリア人気質の部分が面白い。

特にイタリア人デザイナーのセンスが日本人のそれとどう違うか、文化的な背景を元に語られている分が興味をひく。簡単に言うと、イタリア人は個人の特徴をうまく活かしているのに対して、日本では組織により、個性がイタリアほど明確に出ない、ということか。

また日本車とイタリア車の製造効率の違いも面白い。カローラは1台14時間で作られてるのに対して、ポルシェは300時間。フェラーリは3000時間で1台というペースである。この違いは何か?単なる製造効率とは言い切れない。もちろん効率によって値段が大幅に違うわけだけれど、イタリア人は「高級品を作っている」という自負を持ちながら取り組んでいる、という事でもある。

多くのブランド品がイタリアやフランスで作られ、日本人の消費者はそれに価値を見いだして多くのお金を支払っている構造がある。そこから読み取れるのも、金持ち日本人と生産者の構図ではなく、ミケランジェロの時代から芸術を作り出していた、個性を重んじる国民性が作り出す芸術作品を、遙か東洋の日本人が価値を理解して手に入れている、ということ。

ここで疑問が起きるのは「では日本人には出来ないのか?」ではないか。奥山氏はある意味それを追求しに日本に戻ってきたのではないかと思う。

日本にはかつて職人文化があった。手間をかけて、シンプルで美しいものを作り出す芸術性があった。今はそれが効率性重視になり廃れてしまった。何もかもが規格化され、更に言うならば美しい田舎の風景も減ってしまい、どこに言っても同じような人工的な景色。「田舎の風景がきれいなことが先進国の条件」という氏の言葉は身にしみる。

さてフェラーリはなぜ高くても売れるのか?もちろんデザインや希少性が大きな要素を閉めているのは事実だ。しかしもっと重要なのは「人はフェラーリという伝説と一体になるためにそのクルマを求めます」という言葉の通り、Customer Experienceが一番のポイントとなっている。

顧客はフェラーリのオーナーであることに喜びを感じ、フェラーリを経験することによって一体感を高める。今、世界の製造業やサービス業が力をいれなくてはならないのは、単なる安い、ということではなく、Customer Experienceを高め、商品価値を高め、顧客を深く満足させることである。

特に今のような激変の時代、市況が悪く消費者の支出が切りつめられていく時代に、我々は「安さ」で競争を仕切ってしまってはいけない。安さの泥仕合は絶対に消耗戦だ。少ない人数でも収益性を高めるために、顧客を知り、経験価値を高めるための努力を惜しんではならない。

最後に氏がデザインとコミュニケーションについて触れている部分を考察してみよう。「デザインのうちで三分の二がコミュニケーションではないかと考えています」と書かれているように、現代ではデザイナーは単に絵を描く仕事ではなく、プロジェクトリーダーの一人であるべきだ、と思う。

デザイナーは間違いなく「クリエイティブクラス」であり、常に頭を働かせながら全体を見渡していなくてはならない。そのためには企画、デザイン、意志決定、製造、マーケティングの全てのプロセスに関与してリーダーシップ、あるいはアイディアを発揮し続ける時代になっている。そしてそれを実現するために、以下にコミュニケーションとコラボレーションが重要であろうか。

|

« 父親とゴルフでベストスコア | トップページ | 死ぬまでに飲みたい30本のシャンパン »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 父親とゴルフでベストスコア | トップページ | 死ぬまでに飲みたい30本のシャンパン »